船員から工務監督に転職して、長い時間が経過した。仕事も生活も、大きく変わった。今回は、その変化について書いてみたい。これから転職を考えている船員の方にも、参考になれば嬉しい。
まず電話が鳴る
陸上勤務になって最初に感じたのは、電話があるという当たり前のことだった。
船員として働いている間、社外から電話を受ける機会はほとんどなかった。ところが陸上に上がると、造船所・メーカー・代理店など、社外のさまざまな人から電話がかかってくる。メールも次々と入ってくる。PC作業も数多くある。
船の上では機械と向き合う時間が長かった。陸上では人と言葉でやり取りする時間が圧倒的に増えた。最初のうちはそのギャップに戸惑った。
カレンダー通りの生活
生活面での変化も大きかった。
船員時代は長期乗船が基本だ。乗船中は休日もなく働き続け、下船すると長期の休暇がある。そのリズムに慣れていたため、最初は戸惑う部分もあった。船員時代の長期休暇を懐かしく思うこともある。
ただ、年齢を重ねると休みなく船内で働き続ける生活は体力的にしんどくなってくる。その点では、基本的にカレンダー通りに休める陸上勤務はありがたい。
意外ではないが、通勤が生まれたことも変化のひとつだ。船員は住まいと職場が一体だ。通勤という概念がない。陸上勤務になって初めて、毎日の通勤が日常になった。慣れてしまえば当たり前のことだが、最初は新鮮な感覚があった。
船員経験が活きる場面
転職して良かったと感じるのは、船員時代の経験が仕事に直結する場面があることだ。
機関部職員として実際に機械のメンテナンスをしていた経験は、工務監督の仕事で確実に役立っている。船内の状況が頭の中でイメージできるからだ。乗組員からの不具合報告を聞いたとき、現場の様子を具体的に思い描けることは、判断の精度を上げてくれる。
もうひとつ、思いがけず役立ったのが学生時代の座学の知識だ。機関科で学んだ理論が、現場の問題を解釈するときにふと蘇ることがある。あのとき、もっとちゃんと勉強しておけばよかった——そう思う瞬間が、工務監督になってから何度かあった。学校で学んだことは、すぐには役立たなくても、いつかどこかで活きてくるものだと感じている。
船員経験だけでは通用しないこと
一方で、船員経験だけでは補えない部分もある。
会社のルール、社内の調整、関係者との交渉——こうした「陸の仕事」は、乗船経験からは学べない。船員時代に培った技術や知識はベースになるが、その上に陸上での経験を積み重ねていく必要がある。転職直後は、船の知識はあっても仕事の進め方がわからないという状況になりやすい。焦らず、少しずつ覚えていくしかない。
転職して思うこと
船員から工務監督への転職は、生活も仕事も大きく変わる選択だ。得るものもあれば、失うものもある。どちらが良いかは人それぞれだ。
ただ、船員時代の経験は工務監督の仕事の土台になる。その経験を持って陸に上がることは、決して無駄ではない。船を知っている人間が、陸から船を支える——それがこの仕事の面白さだと思っている。



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