船舶検査とは何か、検査のインターバルや種別については別の記事で解説した。今回はさらに踏み込んで、実際の検査内容を一覧表で整理するとともに、工務監督の視点から実務のポイントを紹介したい。
なお、以下は一般的な鋼製内航船を想定した代表例であり、船種・航行区域・船齢・船級の有無・計画保全方式の採用状況などによって検査内容は異なる場合がある。
また、検査官の裁量や地域性によるところもある。また検査にも流行りがあったり、制度の改正もあるので、事前に検査機関との打ち合わせをすることをお勧めする。
検査内容一覧表
※○:実施 -:不要 A:第2A種中間検査のみ実施
船体
| 検査項目 | 定期 | 第1種中間 | 第2種中間 | 第3種中間 |
|---|---|---|---|---|
| 船体外部(外板・甲板等)外観検査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 閉鎖装置・通風筒・空気管・げん窓等外観検査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 船体内部・タンク内検(建造年数に応じた範囲) | ○ | ○(状況に応じて) | 原則- | ○ |
| 水密隔壁・水密戸・各種貫通部外観検査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 圧力試験(建造後13年経過の最初の定期検査以降10年毎) | ○ | - | - | - |
板厚計測(鋼船のみ)
| 建造年数 | 実施時期 | 計測断面数 | 計測箇所 |
|---|---|---|---|
| 建造後13年を経過した最初の定期検査時 | 定期検査 | 1断面 | 船体中央部0.4L間の外板・甲板・二重底頂板等 |
| 建造後18年を経過した最初の定期検査時 | 定期検査 | 2断面 | 船体中央部0.4L間の外板・甲板・二重底頂板等 |
| 建造後23年以上34年未満の定期検査時 | 定期検査 | 3断面 | 船体中央部0.4L間の外板・甲板・二重底頂板等 |
| 建造後34年以上 | 定期検査 | 船舶ごとに決定 | 状況・経緯を考慮して決定 |
| 衰耗が著しい部材 | 定期・中間 | 随時 | 主要構造部材 |
建造後13年・18年・23年で板厚計測範囲が段階的に拡大される。
水中部
| 検査項目 | 定期 | 第1種中間 | 第2種中間 | 第3種中間 |
|---|---|---|---|---|
| 船体外板(水中部)外観検査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 舵の外観検査・作動確認 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| プロペラの取り外し検査 | ○ | ○(一部省略可) | - | ○ |
| プロペラ軸抜き出し・軸身検査 | ○ | ○(一部省略可) | - | ○ |
| 船尾管シール装置の解放検査 | ○ | - | - | ○ |
| 船尾管軸受の摩耗量計測 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 船底塗装の確認 | ○ | ○ | - | ○ |
| 船底弁・船外弁の開放検査 | ○ | ○ | - | ○ |
| シーチェストの確認 | ○ | ○ | - | ○ |
※船級・軸種別・CMS/PMS等の採用状況により、軸検査や開放検査の特例が適用される場合がある。
機関
| 検査項目 | 定期 | 第1種中間 | 第2種中間 | 第3種中間 |
|---|---|---|---|---|
| 機関室・ボイラー室等の外観検査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| タンカーのポンプ室・諸管系統等の外観検査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 主機(内燃機関)の解放検査 | ○(完全解放) | ○(一部省略可) | - | ○ |
| 補助機関・補機の解放検査 | ○(完全解放) | ○(一部省略可) | - | ○ |
| 発電機駆動補助機関(2台以上) | 半数解放 | 半数解放 | 作動試験 | 半数解放 |
| ボイラーの解放検査 | ○ | ○(省略可) | - | ○ |
| 効力試験(海上運転) | ○ | 状況に応じて | ○(作動試験) | ○ |
| 機関備品の現状・数量確認 | ○ | ○ | ○ | ○ |
機関の解放検査省略条件
| 条件 | 省略内容 |
|---|---|
| 製造後11年未満の内燃機関 | 解放検査 → 効力試験(海上運転)へ代替可能 |
| 前回解放後の使用時間が次回検査時期まで7,000時間以内と推定 | 解放検査 → 外観検査・運転検査へ代替可能(最長10年間隔) |
| 空気圧縮機・こし器等で保守整備記録が良好 | 解放検査立会いを省略可能 |
| 発電機駆動補助機関が2台以上 | 定期・1中で半数ずつ交互解放 |
| PMS(機関計画保全検査制度)の承認を受けた機関 | 定期検査での解放検査を省略できる場合がある |
計画保全制度を採用している船では、整備記録や運転記録をベースに検査合理化が図られている。
排水設備
| 検査項目 | 定期 | 第1種中間 | 第2種中間 | 第3種中間 |
|---|---|---|---|---|
| ビルジポンプの解放検査 | ○ | ○(省略可) | - | ○ |
| ごみよけ箱・どろよけ箱等の開放検査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 船底弁等の開放検査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 排水試験 | ○ | ○ | ○ | ○ |
電気設備
| 検査項目 | 定期 | 第1種中間 | 第2種中間 | 第3種中間 |
|---|---|---|---|---|
| 非常電源用発電機の始動試験 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 発電機の過速度防止装置等の動作試験 | ○ | ○(特1中のみ) | A | ○ |
| 発電機の並行運転試験・負荷試験 | ○ | ○(特1中のみ) | A | ○ |
| 配電盤の現状検査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 負荷開閉器・遮断器の試験 | ○ | ○(特1中のみ) | A | ○ |
救命・消防設備
| 検査項目 | 定期 | 第1種中間 | 第2種中間 | 第3種中間 |
|---|---|---|---|---|
| 救命・消防設備全般の外観検査 | ○ | ○ | ○ | ○ |
| 救命・消防設備の効力試験・作動確認 | ○ | ○ | ○ | ○ |
海上試運転
| 検査項目 | 定期 | 第1種中間 | 第2種中間 | 第3種中間 |
|---|---|---|---|---|
| 海上試運転 | ○ | 状況に応じて | 原則- | ○ |
現役工務監督から見る——検査現場のリアル
船底検査——上架したときにしか見えない
検査項目の中で特に重要だと感じるのが船底検査だ。
船底は上架したときにしか十分な確認ができない。上架後に高圧洗浄を実施したら、まず外板の状態を確認する。
- 損傷はないか
- 異常なへこみはないか
- 防食状態は良好か
などを見ていく。
船齢が高い船では、船底に穴があいたりするが、外板側からというよりは、船内側からの腐食が多いように感じる。船底の湿気やビルジによる腐食。ボルトなどが落下し電蝕が進んでしまうなどの原因がある。
船底の塗装を行う前には、入念にジェット鏨などで外板を叩くようにしている。
効力試験——ビルジポンプが吸わないとき
効力試験で行うビルジポンプの吸引試験では、まれに吸込み不良が発生することがある。
そのような場合は、
- 呼び水不足
- 吸込み側の状態
- バルブ開閉状況
などを確認しながら対応する。
検査本番でこうした事象に遭遇すると緊張するが、慌てず原因を一つずつ確認することが重要だ。
工務監督にとって大切なのは検査当日ではない
一覧表を見ると検査項目の多さに圧倒されるかもしれない。
しかし工務監督の立場から言えば、本当に重要なのは検査当日ではない。
日頃から
- 整備履歴
- 運転時間記録
- 計測記録
- メーカー整備報告書
を適切に管理しておくことが重要だ。検査は、その結果を確認する場に過ぎない。
工務監督の仕事は、検査で指摘を受けてから対応することではなく、日常管理を通じて指摘事項が発生しない状態を維持することにある。
準備と記録こそが、検査をスムーズに進める最大の鍵である。



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