船には、法律に基づいて備え付けが義務付けられている公文書が存在する。
自動車であれば車検証が代表例だが、船の場合はそれだけではない。
船籍を証明する書類、安全性を証明する書類、無線設備の免許を証明する書類、さらには国際条約に基づく保険加入を証明する書類まで、多数の公文書が存在している。
工務監督として仕事をしていると、検査、入渠、売買、保険、トラブル対応など、さまざまな場面でこれらの書類を確認する機会がある。
今回は現役工務監督の視点から、船内に備え付けられている代表的な公文書について整理してみたい。
船舶の主な公文書——概要
船舶国籍証書
船舶法第1条:日本船舶は国籍証書の交付を受けなければ航行に供してはならない。
| 書類名 | 内容・意味するところ |
|---|---|
| 船舶国籍証書 | 船舶が日本船籍であることを証明する証書。船名・船籍港・総トン数・船舶所有者などが記載される。日本船舶はこの証書の交付を受けた後でなければ航行に供することができない。 有効期限はないが、定期的な検認(裏書)により、有効性が維持される制度がある。 これは、登録内容が現状と一致していることを確認するために存在する。 ⇒検認がないと実務的に「有効とみなされない」 |
船舶国籍証書は、その船が日本船舶であることを証明する書類である。
船名
船籍港
総トン数
所有者
などが記載されている。
実務的には、「船の戸籍謄本」のような存在と考えると分かりやすい。
売船手続き、抵当権設定、船舶検査、各種契約など、多くの場面で写しの提出が求められる。
船舶検査証書・手帳・件名表
船舶安全法 第9条第1項
管海官庁(地方運輸局等)は、定期検査に合格した船舶に対して、航行区域、最大搭載人員、制限汽圧および満載喫水線の位置を定め、船舶検査証書を交付する。
| 書類名 | 内容・意味するところ |
|---|---|
| 船舶検査証書 | 船舶安全法に基づく検査に合格した証書。航行区域・最大搭載人員・満載喫水線等の条件が記載される。有効期間は原則5年 ⇒「この船は安全に航行できる」と国が認めた証書 ⇒航行の許可証そのもの |
| 船舶検査手帳 | 最初の定期検査合格時に交付される手帳。その後の検査履歴・検査結果・指摘事項等が記録される。 ⇒検査履歴の蓄積 |
| 船舶件名表 | 船舶に搭載されているすべての機器・設備の仕様・型式・製造番号・検査結果などを記録した台帳。検査結了後に検査記録が添付される |
無線局免許状
| 書類名 | 内容・意味するところ |
|---|---|
| 無線局免許状 | 電波法に基づき、船舶に搭載する無線設備(船舶局)の免許を証する書類。船舶局の主たる送信装置のある場所への掲示が義務付けられている |
ナイロビ条約証書
船舶油濁損害賠償保障法 第39条18(要旨)
国際総トン数300トン以上の船舶の船舶所有者は、難破物除去損害に関する責任を担保する保険契約等を締結していなければならない。 (ナイロビ条約対応規定)
船舶油濁損害賠償保障法 第39条の22(要旨)
国土交通大臣が交付する証明書を船舶に備え置かなければならない。
| 書類名 | 内容・意味するところ |
|---|---|
| 難破物除去ナイロビ条約証書 | 船舶が座礁・沈没した場合の難破物除去費用を担保する保険(P&I保険)への加入を証明する証書。国際総トン数300トン以上の船舶に備え付け義務がある |
現役工務監督から見ると——書類管理の実務
これらの他にも、船内に保管しておかなくてはならない公文書はまだあるが、ほとんど触る事はない。
これらの書類の中で、工務監督として日常的に関わりが多いのは国籍証書・検査証書・検査手帳の3つだ。
これらの書類は原本を必ず船に掲示または備え付けておかなければならない。そのため、工務監督は事務所に必ずコピーを保管している。
コピーを手元に置いておかないと、必要になるたびに船からコピーを送ってもらわなければならなくなる。手間もかかるし、検査の打ち合わせにも支障が出る。
検査の際には、これらのコピーを持って検査官との事前打ち合わせに臨む。
また検査時には国籍証書・検査証書・検査手帳の原本を運輸局に提出する。
ナイロビ証書は船舶の建造中に入手し、その後はほぼ関わる機会がない。
無線局免許状も検査時に検査官へ提示する場合がある程度で、日常的に関わることは少ない。
書類の管理は地味な作業だが、検査・入渠・トラブル対応のあらゆる場面でこれらの書類が必要になる。常に最新版を手元に持っておくと便利だ。



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