船舶検査とは何か、という基本的な解説は別の記事で投稿した。
今回はその続編として、定期検査と中間検査の内容・インターバル・準備について、法律上の根拠を含めて整理をしてみた。実務者の方にはあくまで参考にとどめて頂き、実際は、検査官の見解に従っていただきたい。一般的な貨物船に該当する部分は、太字で強調する。

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定期検査と中間検査
船舶安全法で、検査制度の骨格を定め、
船舶安全法施行規則が具体的な検査時期や検査方法を定めている。
船舶安全法 第5条
船舶所有者は、船舶安全法第2条第1項に規定する船舶については同項各号に定める設備等について、第3条に規定する船舶については満載喫水線について、また第4条第1項に規定する船舶については無線設備について、国土交通省令で定めるところにより、次の区分の検査を受けなければならない。
1 定期検査
船舶を初めて運航する場合、または船舶検査証書の有効期間が満了した場合に行う詳細な検査。
2 中間検査
定期検査と定期検査の間に、国土交通省令で定められた時期に行う簡易な検査。船舶安全法施行規則第18条
中間検査の種類や実施時期について定められている。
定期検査=船舶検査証書の有効期限
・有効期間は原則5年(船舶安全法第10条第1項)。
・平水区域の旅客船以外・20トン未満の船舶は6年(船舶安全法第10条第1項ただし書)。
・受検期間は有効期間満了日の前3ヶ月以内(船舶安全法第10条第4項1)。
船舶安全法 第10条第1項
船舶検査証書の有効期間は5年とする。
ただし、旅客船を除く平水区域航行船舶および国土交通省令で定める小型船舶については、有効期間を6年とする。
船舶安全法第10条第2項
やむを得ない事情により有効期間内に定期検査を受けられない場合の救済規定である。この場合、船舶検査証書は有効期間満了後も最大3か月間効力を維持することができる。
船舶安全法第10条第3項
定期検査に合格したにもかかわらず、やむを得ない事情により新たな船舶検査証書の交付が有効期間満了日までに受けられない場合、旧船舶検査証書の効力を新証書の交付まで継続させる規定である。ただし延長期間は最大5か月に制限されている。
船舶安全法第10条第4項
定期検査を有効期間満了日の3か月以内に受検した場合、次回の船舶検査証書の有効期間を従前証書の満了日の翌日から起算することを定めている。これにより、ドック工程や運航計画の都合で早めに受検しても、有効期間が短縮されることはない。
| 船の種類 | 有効期間 | 受検期間 | |
|---|---|---|---|
| 旅客船・危険物ばら積船・特殊船・ボイラを有する船舶等 | 5年 | 有効期間満了日の前3ヶ月以内 | 船舶安全法第10条第4項1 |
| 上記以外の一般船舶 | 5年 | 有効期間満了日の前3ヶ月以内 | 同上 |
| 旅客船以外で平水区域の船舶・総トン数20トン未満の小型船舶 | 6年 | 有効期間満了日の前3ヶ月以内 | 同条同項ただし書 |
中間検査
船舶安全法施行規則第18条では、中間検査の種類と時期を船種ごとに定めている。
・一般船舶は船舶検査証書の有効期間の起算日から21~39か月の間に中間検査を受ける。
・平水区域船および一定の小型船舶(有効期間6年)は33~39か月の間に第一種中間検査を受検する。
・旅客船など一部の船舶は、検査基準日の前後3か月以内に中間検査を受けるものとされている。
・中間検査は前倒し受検も可能であり、入渠工事や運航計画に合わせて実施できる。
検査基準日とは、船舶検査証書の有効期間が満了する日に相当する毎年の日であり、
中間検査の受検期間を算定する基準となる日である。
<例>
船検証書有効期間開始日:2024年7月15日
有効期間満了日 :2029年7月14日
検査基準日 :毎年7月14日
| 船種 | 中間検査の種類 | 受検時期 |
|---|---|---|
| 国際航海に従事する旅客船(総トン数5トン未満を除く) | 第一種中間検査 | 検査基準日の3か月前から検査基準日まで |
| 旅客船(総トン数5トン未満を除く)、潜水船、水中翼船、高速船等 | 第一種中間検査 | 検査基準日の前後3か月以内 |
| 国際航海に従事する長さ24m以上の船舶(上記船種を除く) | 第二種中間検査 | 検査基準日の前後3か月以内 |
| 平水区域船・一定の小型船舶(船検有効期間6年) | 第一種中間検査 | 有効期間起算日から33か月~39か月の間 |
| その他の一般船舶 | 第一種中間検査 | 有効期間起算日から21か月~39か月 |
中間検査の種別
船舶安全法施行規則第18条
中間検査を第一種中間検査、第二種中間検査及び第三種中間検査の3種類に区分している。
種類によって検査する内容や実施時期が異なる。
| 種別 | 主な内容 |
|---|---|
| 第一種中間検査 | 船体を上架(または同等の準備)して行う検査と機関関係の検査を組み合わせた比較的詳細な検査。外板、舵、推進器、主機、補機などの状態を確認する。 |
| 第二種中間検査 | 船体関係の事項について行う検査のうち、上架を必要としない検査。主として船内確認や書類確認等を行う。 |
| 第三種中間検査 | 機関、ボイラ、圧力容器等の機関関係設備について行う検査。 |
定期検査・中間検査の内容比較
本表は、定期検査および中間検査の主な検査内容を比較したものである。
実際の検査項目や開放範囲は船種、設備構成、船齢等によって異なり、さらに詳細な区分が定められていることに留意されたい。
外観検査や開放検査の具体的な実施範囲は、船舶安全法施行規則第24条(定期検査)及び第25条(中間検査)に基づき、「船舶安全法施行規則に規定する定期検査等の準備を定める告示」において詳細に規定されている。
例えば主機(内燃機関)の場合、定期検査では主要部の開放検査が求められる一方、
第一種中間検査では、一部の開放検査に簡略化されるなど、検査の深度に違いがある。
| 検査項目 | 定期検査 | 第一種中間検査 | 第二種中間検査 | 根拠 |
|---|---|---|---|---|
| 船体外部 | 外観検査 | 外観検査 | 外観検査 | 施行規則第24条・第25条 |
| 船体内部・タンク | 船齢・構造に応じた内部検査 | 状況に応じて実施 | 原則省略 | 同上 |
| 主機(内燃機関) | 主要部の開放検査 | 告示で定める範囲の開放検査 | 外観検査および作動確認 | 定期検査等の準備を定める告示 |
| 補機・補助機器 | 必要に応じ開放検査 | 一部開放検査 | 外観検査および作動確認 | 同告示 |
| 軸系・プロペラ | 詳細検査(必要に応じ軸抜き等) | 外観検査 | 外観検査 | 同告示 |
| 救命設備・消防設備 | 検査および作動試験 | 検査および作動試験 | 検査および作動試験 | 船舶救命設備規則・船舶消防設備規則 |
| 海上試運転 | 必要と認められる場合に実施 | 必要と認められる場合に実施 | 原則省略 | 施行規則の効力試験に関する規定 |
検査の省略・簡略化制度
船舶検査には、一定の条件を満たした場合に検査の一部を省略または簡略化できる制度が設けられている。
ただし、これは船舶所有者や管理会社に検査を「任せる」というものではない。検査官が現物を確認する代わりに、整備記録や運転記録などの客観的な記録によって設備の状態を確認することを前提としている。
言い換えれば、
日頃から適切な保守管理と記録管理を行っている船舶については、開放検査の一部を記録確認に代替できる仕組み
である。
| 省略の条件 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 一定条件を満たす製造後11年未満の内燃機関 | 保守整備記録や運転記録等から機関の状態が良好と認められる場合、開放検査を効力試験(海上運転等)に代替できる場合がある | 船舶検査心得(内規) |
| 稼働時間が少ない機関 | 前回解放検査後の使用時間が少なく状態が良好と認められる場合、解放検査の一部を外観検査や運転確認に代替できる場合がある | 船舶検査心得(内規) |
| 発電機駆動の補助機関が2台以上ある場合 | 定期検査と第一種中間検査で交互に解放検査を実施し、残りを効力試験で確認できる場合がある | 同上 |
| 整備記録が良好な場合 | 空気圧縮機やこし器等について、整備記録や保守履歴から状態が確認できる場合、開放検査の立会いを省略できることがある | 同上 |
| 機関計画保全検査制度(PMS) | 承認された保全計画に基づいて整備・記録管理を実施することで、定期検査時の解放検査の一部を代替できる制度 | 国交省告示・通達 |
| 整備認定事業場制度 | 認定事業場で整備・確認された物件は、認定後30日以内に行う定期検査又は中間検査で検査を省略できる場合がある | 船舶安全法第6条の3 |
| 予備検査・型式承認済み物件 | あらかじめ予備検査又は型式承認を受けた機器を搭載する場合、その機器に関する検査を簡略化または省略できる | 船舶安全法第6条の2~第6条の4 |
きちんと船を管理・整備していることを書類で証明できれば、不要な解放工事を省ける仕組みだ。
現役工務監督から見る省略制度の実際
定期検査と中間検査で最も大きく異なるのは、機器を開放する範囲である。
一般的に、定期検査の方が確認範囲は広く、準備工数も大きくなる。
入渠期間も長くなり、事前に準備しておく部品や消耗品も多い。
もっとも、長年同じ船で定期検査を繰り返している場合は、整備周期や準備内容がある程度定型化されている。もちろん負担は小さくないが、毎回ゼロから計画を立てるわけではない。
一方、省略制度については、活用できるものは積極的に活用している。
整備記録や運転記録を提出し、それによって開放検査を省略できれば、工事費用や工事期間の削減につながる。
ただし、省略制度は「記録が残っていること」が大前提である。
検査直前になって記録を整えようとしても間に合わないことが多い。
日常的に整備記録、運転記録、保守履歴を継続して管理し、それを第三者が確認できる状態にしておくことが重要である。
まとめ
船舶検査には、整備認定事業場制度や機関計画保全検査制度(PMS)など、記録管理によって検査の一部を簡略化できる制度が設けられている。
これらの制度は単なる「検査の省略」ではなく、
適切な整備と記録管理が行われていることを前提として、現物確認の一部を記録確認に置き換える制度
と考えるのが正しい。
実務上、検査当日の対応よりも重要なのは日常の記録管理である。船舶の状態を継続的に把握し、その履歴を適切に残しておくことが、結果として検査対応の効率化やコスト削減につながるのである。



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