船で不具合が発生したとき、工務監督の仕事が始まる。原因を特定し、修理の手配をして、船を早期に正常な状態に戻す。シンプルに聞こえるが、実際にはそう簡単にいかないことが多い。今回は、不具合対応で工務監督が最も困ることについて書いてみたい。
第一報が間違っている 😢
不具合対応で最も困るのは、第一報が間違った状況で伝えられることだ。
出だしを間違えると、対応が明後日の方向に進んでしまう。途中で方針を転換するのは大きなエネルギーを消費する。部品を手配してから「実は違う箇所だった」となれば、時間もコストも無駄になる。最初の情報がどれだけ重要か、不具合対応を経験するほどそれを痛感する。
だからまず、報告を聞いて情報を整理することが大事だ。整理していく中で矛盾点が見えてくることがある。「この症状なら、こういう原因のはずだが、それならこの部分も影響するはずだ。でも報告にはその記述がない」——そういった違和感が、本当の状況への糸口になる。
鵜呑みにしない、しかし責めない
仕事に慣れないうちは、船からの報告をそのまま受け取ってしまうことがある。それは仕方のないことだ。しかし「あれ、おかしくないか?」と気づけるようになることが、専門職として雇われている工務監督が工務監督である所以だと思っている。
ただし、船員を責めることはしない。彼らは現場で対応しながら、同時に報告もしている。混乱した状況の中で正確な情報を伝えるのは難しい。責めても何も解決しない。
私がやるのは、報告の内容を自分自身で咀嚼してから、乗組員とひとつずつ整理していくことだ。「ここはこういう理解でいいですか?」「この部分、もう少し詳しく教えてもらえますか?」——そうやって話を進めると、乗組員自身が「あ、そういえば」と気づくことがある。こちらから「本当の状況はこうではないか?」と話を振ることもある。そして時には、私自身が勘違いしていたことに気づくこともある。情報の整理は、一方通行ではなく双方向の作業だ。
日程が決まらない、じりじりとした時間
不具合対応でもうひとつ精神的に消耗するのが、修理の日程がなかなか決まらないときだ。
原因が特定できても、修理ができなければ問題は解決しない。部品の納期が長くかかってしまうこと、メーカーのサービスエンジニアのスケジュールが合わないこと、船の営業上の予定がなかなか定まらないこと——これらが重なると、日程調整が長期戦になる。
この時間が、工務監督として最もじりじりする瞬間だ。対応の方針は決まっているのに、前に進めない。船員としても、不具合を抱えたまま航海を続けることになり、モヤモヤが積み重なる。陸も船も、同じ霧の中にいるような感覚だ。
不具合対応は情報戦だ
不具合対応を通じて思うのは、これは情報戦だということだ。正確な情報をいかに早く手に入れるか——それがすべての起点になる。
そして情報には、表に出ているものと、裏にあるものがある。技師の手配状況、部品の納期、営業の予定——これらは表の情報だ。しかしその裏には、「実はこの部品、別ルートで早く入手できる」「このエンジニア、実は来週なら動ける」「営業側の予定、少し調整できる余地がある」といった情報が潜んでいることがある。複数の関係先がある場合、情報の中心にいるのは工務監督だ。
そうした裏の情報を仕入れられるかどうかで、打てる手がまったく変わってくる。日程が1週間早まることもあれば、コストを抑えられることもある。表の情報だけを見て「これ以上どうにもならない」と諦めるのと、裏の情報まで掘り下げて動くのとでは、結果に大きな差が出る。
情報を集め、整理し、矛盾を見つけ、裏まで掘り下げる。焦らず、責めず、しかし鋭く。それが不具合対応における工務監督の姿勢だと思っている。



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