新造船建造の流れ③——試運転から引き渡しまで

機器を点検している男性 工務監督の仕事
UnsplashTECNIC Bioprocess Solutionsが撮影した写真のTECNIC Bioprocess Solutionsが撮影したイラスト素材

前回は建造中の現場確認と図面承認について解説した。今回はいよいよ最終章——試運転から引き渡しまでの流れを解説する。

試運転——概要

予行と公試の違い

試運転は予行と公試の2段階に分かれている。

公試とは、検査機関の検査官が乗船し、所定の性能試験を海上で確認する最終検査だ。船の性能が定められたルールを満足しているか、発注者との契約で定められた性能を確認するのが目的だ。検査官が公試において問題がないことを確認すると、国籍証書や検査証書などの証書が発行される。

予行とは、公試の試験内容を事前に行い、データを採取して問題がないことを確認するとともに、検査には含まれない機器類の作動確認を行うものだ。

試験の内容

試運転では、普段の操船では行わないような性能試験が実施される。主な試験内容は以下の通りだ。

速力試験:エンジン出力を段階的に変化させ、各出力における船速を計測する。風や潮流の影響を排除するため、同一区間を数往復してその平均をとる。

クラッシュアスタン:全速前進の状態からエンジンを全速後進に切り替え、船を急停止させる試験だ。緊急時を想定した試験であり、船に大きな負荷がかかる。

旋回試験:大きく舵を切って旋回性能を確認する試験だ。操縦性能が仕様通りであることを確認する。

このほかにも、投錨機・舵取り器・主機・補機など、船の生命線となる各機器の性能確認が行われる。公試には造船所スタッフ・各メーカー担当者・船主・検査官など多くの関係者が乗船して行われる。

引き渡しまでの流れ

公試が終わると、最終的な艤装工事が行われ、引き渡しへと向かう。建造期間を通して、設計検査・製造中検査・完成検査(海上試運転等)が実施され、すべてに問題がないことが確認されると、国籍証書・船舶検査証書などの証書が発行される。これをもって船は正式に就航できる状態となる。

試運転で心がけること

特に予行時には、試験の結果確認はもちろん、艤装員や造船所の職員とともに船内をできる限り見回る。振動している箇所はないか、海水や油類が漏洩している箇所はないか、機器類の運転や作動に問題はないか——できる限りの点検を行う。

試運転は数日にわたり行われるが、確認すべき項目は多く時間は短い。引き渡し後のトラブルを未然に防ぐための、最後の砦だ。

引き渡しの日

引き渡し当日は、造船所に飾り付けが施され、いつもとは違った雰囲気になる。引き渡し式の最中は工事の音もなくなり、厳粛な雰囲気の中で式が執り行われる。

引き渡し式が終わると入魂式が執り行われる。神主さんが乗船して神事が行われ、その後は記念撮影を経て、いよいよ出港となる。

出港の瞬間、ほっとした気持ちになる。しかしそれもつかの間だ。引き渡し後のドタバタや次の船の建造に気持ちが持っていかれてしまう。もっとほっとした気分を長く味わいたいところだが、この仕事はそうはいかない。

それが建造監督という仕事の終わりであり、次の始まりでもある。

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