工務監督の仕事のひとつに、新造船の建造監督がある。普段の維持管理とは異なり、船を「ゼロから作る」プロセスに関わる仕事だ。今回はその第一回として、新造船が発注されるまでの流れを解説する。
新造船建造の流れ——概要
新造船の建造は、大きく以下の流れで進む。
①社内での仕様決定
まず社内で「どのような仕様の船をいつ頃建造するか」を決定する。仕様とは船の大きさ、予定の航行区域、積載する荷物の種類、そして最近では環境対応のために導入できる新技術の検討なども含まれる。まったく新しい仕様で建造するのか、運航中の船の中に同仕様のものがあればそれを参考にするのか——いくつかのアプローチがある。
②造船所への打診
社内での検討と並行して、建造候補となる造船所に声をかける。船台の空き状況の確認や、造船所側からの提案があれば受け取る。社内の打ち合わせと造船所との打ち合わせを繰り返しながら見積もりを取得し、最終的に社内で建造を決定する。
③発注・契約
造船所への正式発注となる。船価・建造工程・仕様書などが揃った段階で契約に至る。ここから本格的な建造プロセスが始まる。
④建造開始に向けた打ち合わせ
発注後は、造船所・主要メーカー(内燃機メーカー・航海機器メーカー・その他機器メーカー)と建造開始に向けた詳細な打ち合わせを重ねる。検査機関との打ち合わせに立ち会うこともある。
⑤図面の承認
造船所から多種多様な承認図面が提出される。仕様が正確に反映されているか、図面に誤りがないかを細かくチェックする。この図面確認作業は、建造監督の中でも特に重要な仕事のひとつだ。
造船所側の建造工程
発注が決まると、造船所側では以下の工程で建造が進んでいく。参考として把握しておきたい。
基本設計では積載能力や速力など船の全体像を決め、詳細設計で各部門ごとの具体的な仕様を固める。設計が完了すると資材が発注され、鋼板の切断・加工が始まる。切り出された部材は小組立・ブロック組立という工程を経て、大きなブロック単位に組み上げられる。それらを船台やドック上でつなぎ合わせ、進水を迎える。進水後は岸壁で艤装工事(各機器の取付・仕上げ)を行い、試運転を経て引き渡しとなる。
現役工務監督から見ると——造船所選びの話
発注先の造船所をどう選ぶか。船価(価格)だけで決められるものではない。引き渡し後の不具合は少ないほうがよい。船を止めずに済むことが一番の利益になるからだ。船価は安くてもランニングに掛かる費用が高ければ意味がない。船は、厳しい環境で、長期間動き続ける。
まず建造実績がある造船所が第一候補となる。造船所にも得意・不得意な船種があるため、同様の船種を手がけてきた実績は重要な判断基準だ。
また、船の建造は非常に手間暇のかかる作業であり、造船所の見積もり作成も簡単な仕事ではない。あちこちの造船所に打診することは得策ではない。造船所側から見ると、受注につながるのか疑心暗鬼にもなる。発注する側からしても、管理や、コミュニケーションにかかる労力が大きなものになる。建造実績のある造船所はオーナーの仕様をある程度把握しているため、コミュニケーションにかかるコスト——手間・時間・誤解のリスク——が少なくて済む。長い付き合いの中で培われた信頼関係は、新造船という大きなプロジェクトを動かす上で無形の財産になる。



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