船の熱交換器とは何か——仕組みと種類、工務監督が経験した不具合

落ちる効率は、点検で防ぐ 船のこと

前回の記事でディーゼルエンジンの仕組みを解説した。
エンジンは動くと熱を持つ。その熱を逃がすために冷却清水が必要で、さらにその冷却清水を冷やすための装置が必要になる。それが熱交換器だ。今回は熱交換器の仕組みと種類、そして私が、現場で経験した不具合について解説する。

熱交換器とは何か——概要

熱交換器の基本的な仕組み

熱交換器とは、温度の異なる2つの流体の間で熱をやり取りする装置だ。
熱は高いところから低いところに移動する。
高温の流体と低温の流体を壁越しに接触させることで、混ぜることなく熱だけを、低温の流体に移動させる。

低温側の流体には、海水を使用する。
ポンプで取り込まれた低温の海水は、熱交換器を通過しながら、高温の冷却清水から熱を受けとる。
熱を渡した冷却清水の温度は低下し、またエンジンを冷却するために循環を開始する。冷却清水から熱を受け取り温かくなった海水は、そのまま海に排出される。

船舶では、主に以下のような用途で使用される。

  • エンジンのジャケット冷却清水の冷却
  • 潤滑油の冷却
  • 空気冷却(空気冷却器:インタークーラー)

主にエンジンでは、冷却清水(クローズ系)⇒海水(オープン系)という二段構成での冷却が一般的である。

熱交換器の種類

船でよく使われる熱交換器には主に2種類ある。

シェルアンドチューブ式(多管式)熱交換器

太い円柱状の胴体(シェル)に細い多数の円管(チューブ)を配置し、シェル側の流体とチューブ側の流体の間で熱交換を行う。

特徴

  • 構造が単純で堅牢
  • 高圧、高温条件に対応可能
  • 大容量用途に適する

プレート式熱交換器

薄い金属板(プレート)を多数積層した構造。
高温流体と低温流体が1枚置きに流れ、対向流で熱交換を行う。

  • 総括伝熱係数が多管式に比べ非常に大きく、高い熱交換効率を持つ。
  • コンパクト、軽量。(シェルアンドチューブ式の約1/3~1/5程度)

2種類の比較

項目シェルアンドチューブ式プレート式
構造シェル内に多数のチューブ薄いプレートを積層
サイズ大型コンパクト
耐圧・耐熱性高いやや低め(ガスケット式の場合)
メンテナンスチューブを1本ずつ清掃意外と手間がかかる。
主な用途主機冷却・高圧用途補機冷却・省スペース用途

現役工務監督から見ると——現場のリアル

海水ラインは汚れやすい

熱交換器は、定期的な清掃だ。
特に海水が流れるラインは汚れが溜まりやすい。

  • 貝類(付着生物)
  • 海藻
  • ゴミ
  • スケール(カルシウム等)

これらにより、伝熱性能が低下し、冷却能力の低下からエンジンの温度上昇につながる。

シェルアンドチューブ式の場合、チューブを1本1本ブラシで掃除する必要がある。本数が多いため、作業負荷は大きいが、冷却性能維持には不可欠だ。

チューブにクラックが入ったとき

経験した不具合の中で印象に残っているのが、空気冷却器のチューブにクラック(亀裂)が入った事例だ。チューブ側を流れる海水が、空気側に漏れ出し、最終的に主機の給気室に塩の堆積が発生した。

不具合の発見は容易ではなかった。チューブ1本ずつに試験機で圧縮空気を加圧。圧力が低下の有無で漏れを判定する作業だ。本数が多く1本ずつしか試験できないため、全数確認に約8時間かかった。

クラックの入ったチューブの処置として、同じ材質のプラグを打ち込んで塞ぎ、海水が流入しないようにした。
この場合、閉止した分だけ伝熱面積が減少するため、何本までの閉止なら運転に影響がないかを管理する事が重要だ。

この経験から、熱交換器の定期的な清掃と点検がいかに重要かを改めて実感した。問題が起きてから対処するのではなく、状態監視と予防保全で未然に防ぐことが工務監督の役割だ。

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