船の鋳鉄部品にクラックや穴が開いたらどうするか——補修方法と代表的な修理事例

直し方は4つある 船の技術

船のエンジン周りや機器類には、鋳鉄(ちゅうてつ)と呼ばれる材料が多く使われている。この鋳鉄にクラック(亀裂)が入ったり、穴が開いたりすることは珍しくない。問題は「どうやって直すか」だ。

鋳鉄とは何か——なぜ船に多く使われるのか

鋳鉄は、炭素を2〜4%含む鉄の合金だ。融点が低く型に流し込みやすいため、エンジンブロック・ポンプケーシング・バルブ本体など、複雑な形状の部品を安価に大量生産できる。船内には鋳鉄でできた部品が数多く存在する。

ただし鋳鉄は硬いが脆いという性質を持ち、経年劣化・腐食・熱応力によってクラックや穴が生じやすい。問題は、鋳鉄は溶接による補修が非常に難しい材料であるという点だ。溶接時に急速な加熱・冷却が加わると、組織が変化して割れが生じやすくなる。

そのため現場では、溶接以外の補修方法が多く活用されている。

鋳鉄部品の補修方法——4つの選択肢

状況に応じて補修方法を選ぶことが重要だ。最もポピュラーなのは、次のエポキシパテによるものだ。
それ以外の3つの方法は、私自身は経験がなく、対応できる造船所も少ないのではないだろうか。

①エポキシパテ・金属補修剤——最も簡便な応急処置

金属用エポキシパテや金属補修剤をクラック・穴に充填する方法だ。熱を使わず火気不要のため、機関室内でも安全に使用できる。

代表的な製品として以下のものがある。

製品名メーカー特徴
ベロメタル(Belzoメタル)ベロメタルジャパン金属充填エポキシ系補修材。エンジンブロック・クーラーのクラック補修の実績多数
デブコン(Devcon)ITWパフォーマンスポリマー金属充填エポキシ補修材。ポンプケーシング・バルブ本体の補修に広く使用
JBウェルド(J-B Weld)JBウェルド鉄鋼用エポキシ接着剤。比較的小さなクラックの応急処置向け
スーパーラピッド(SuperRapid)ベロメタルジャパン速硬化タイプ。航行中の緊急応急処置に対応

下地処理(油分・錆の完全除去)が補修品質を左右する。表面をしっかりグラインダーや紙やすりで処理してから充填することが重要だ。

②メカニカルスティッチ工法——熱を使わない本格補修

特殊ボルト(スティッチボルト)と補強プレートを組み合わせて、クラックを物理的に縫い合わせる工法だ。補修部に熱を一切加えないため、熱ひずみが発生しない。

③冷間溶接(Ni系溶接棒による溶接)——ドックでの本格修理

Ni系溶接棒(ニッケル系溶接棒)を使用する溶接補修だ。ニッケルが母材からの炭素溶け込みを抑制し、チル化(急冷による脆化)を防ぐ効果がある。

④スタッドボルト補修——クラックの進展防止

クラック端部にドリルで止め穴を開け、スタッドボルトを打ち込んでクラックの進展を物理的に止める方法だ。単独で使うこともあるが、冷間溶接や充填補修と組み合わせて使うことが多い。

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