タグボートとは何か——利島沖の離礁作業から考える「縁の下の力持ち」

押し引きだけじゃない 船の技術

6月19日に利島沖で座礁した琉球海運の「にらいかないⅡ」は、本稿執筆時点でまだ離礁に至っていない。タグボートが到着した20日から満潮になるタイミングに合わせて半日置きに作業しているが、離礁の見通しは立っていない状況だ。 26日には、台風も接近していて、作業も中断されている。

今回の事故をきっかけに注目を集めているタグボートについて、仕組みと役割を解説したい。

タグボートとは何か——概要

「強く引っ張る」船

タグボートは英語で「Tugboat」と書き、「tug」は「強く引っ張る」という意味だ。港湾内などの狭いエリアで細かく自由に動くことができない大型船をロープで牽引したり、船首で押すなどして誘導・補助し、安全に離着岸できるようにサポートするのがタグボートの役目だ。

小さな船体に驚異的なパワー

タグボートは全長30〜35メートル、総トン数200トン前後と小さな船だが、機関出力3,000〜4,400馬力という強力なエンジンを搭載している。比較すると、総トン数11,687トンの「にらいかないⅡ」の約60分の1のサイズで、その巨大な船を引っ張っているということになる。

タグボートには「アジマススラスター」と呼ばれる360度水平方向に回転できるプロペラが搭載されており、このプロペラのおかげで小回りが利き、港内を自由自在に動くことができる。通常の船はスクリューと舵で動くため、低速時には方向転換が苦手だ。しかしタグボートはプロペラ自体が回転するため、前後左右、あらゆる方向に機敏に動ける。

タグボートの主な仕事

タグボートの仕事は着岸・離岸の補助だけではない。主な業務を整理する。

業務内容
着岸・離岸支援港湾内で大型船を押したり引いたりして、安全に着岸・離岸させる
エスコート業務港の外や狭い水道で大型船の前方を先導し、安全な航行をサポート
曳航作業動力を持たないはしけや故障した船を引っ張って輸送する
海難救助・サルベージ座礁・衝突・機関故障などの海難救助作業に従事する
進路・荷役警戒危険物積載船の周囲を警戒し、不審船や漏れがないか監視する
消防・油濁対応消防設備を備え、海上火災や油流出に対応する

今回の利島座礁事故でのタグボートの役割

今回の座礁事故では、タグボートが離礁作業の主役を担っている。

21日もタグボートが沖合に船を引き戻す作業を続けた。満潮になるタイミングに合わせて半日置きに作業しているが、離礁の見通しは立っていない。

なぜ満潮のタイミングに合わせるのか。満潮時は水位が上がり船底への浮力が増すため、タグボートが引っ張る力と相まって離礁しやすくなるからだ。タグボートのパワーだけでは動かせなくても、浮力という自然の力を最大限に利用する——これが座礁時の離礁作業の基本的な考え方だ。

今回はサルベージ会社の大型作業船「航洋丸」も加わり、複数のタグボートと協力して作業を続けている。

タグボートはどんな会社が運営しているのか

タグボートは専門の曳船会社が運営している。日本では各港に複数の曳船会社があり、船会社や代理店からの委託を受けて業務を行う。

小さな船体で高馬力。360度旋回するプロペラにより、海上で自在な動きが可能になる。タグボートの主な業務は、船舶の接・離岸支援業務、漁船の多いエリアで船舶を先導するエスコート業務、造船所で船舶のシフトや進水補助に従事するドック作業などだ。

今回の利島沖のように、通常の港から離れた場所での緊急作業には、外洋での航行が可能な大型のオーシャンタグも派遣される。通常の港内用タグボートよりも船体が大きく、荒天下での作業能力も高い。

工務監督から見たタグボートとの関わり

工務監督の仕事においても、タグボートとの関わりは少なくない。

入渠のシリーズでも触れたが、ドックに船を入れる際には、造船所のタグボートが船を誘導してくれる。狭いドックに大型船を正確に入れるためには、タグボートの技術が欠かせない。着岸する瞬間は、タグボートの船員と工務監督が連携しながら、安全に注意して全体を見守る場面だ。

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