工務監督の仕事の中で、訪船は特別な位置を占めている。事務所でメールや電話でやり取りするだけでなく、実際に船に足を運ぶ。今回は、その訪船について書いてみたい。
船に着いたら、まず雑談
訪船の目的は様々だ。部品の納品、工事の打ち合わせ、トラブル対応——行く理由はその都度違う。しかし船に着いてからの最初の動きは、だいたい同じだ。
まず乗組員に挨拶をしつつ、急ぎでなければ、サロンや食堂、監視室などで少し雑談をする。内容は本当にたわいもないことだ。天気の話でも、最近の航海の話でも何でもいい。
ただその雑談の中で、こちらはいろんなことを感じ取っている。船内の雰囲気はどうか。乗組員の表情はどうか。話し方に覇気があるか、疲弊していないか。数字や報告書には出てこない情報が、雑談の中に滲み出てくることがある。
雑談をしながら、居住区や機関室内の整理整頓の状況も確認する。用事が済んで時間があれば、船をぐるっとまわって全体の状況を簡単に確認する。特に錆の状況や、ロープ類の痛み具合を見ておく。その場で何かするわけではないが、うっすらと記憶に留めておいて、今後の整備計画の参考情報にする。こうした積み重ねが、船の状態を長期的に把握することにつながる。
本題はその時それぞれ
雑談の後、本題に入る。ただし本題の内容によって動き方は変わる。
事務連絡であればそのまま話を続ける。書類の確認や情報共有で済む場合も多い。トラブル対応のときは、問題の機器を実際に目視する。場合によっては運転してもらいながら、機器の状態を直接確認する。写真や文章で説明を受けるのとは、まったく違う情報量がある。
来てよかった、と思う瞬間
訪船して「来てよかった」と感じるのは、トラブル対応のときが多い。
写真や文章だけでは伝わらないことが、現場に来ると一目でわかることがある。逆に「大きな問題だ」と思っていたことが、実際に目で見てみると、たいした問題ではなかったということも多い。電話やメールだけでやり取りしていると、どうしても情報が歪んで伝わることがある。現場に来ることで、その歪みが一気に解消される。
乗組員ともめたときこそ、行く
もうひとつ、訪船の効果を実感する場面がある。乗組員との間で話がこじれたときだ。
事務所でうじうじと考えていても解決しない。電話で話をしてもなにかモヤっとする。直接船に行って話をすると、その場で解決することが多い。がっぷり四つに組んで話をすれば、杞憂に終わることも多々ある。もめた度合いが大きいほど、直接会いに行った方がいい——これは経験から確信していることだ。
メールや電話は便利だ。しかし人と人の問題は、顔を合わせて話すことで動くことが多い。どんなにデジタルが進んでも、この部分は変わらないと思っている。
訪船は情報収集の場でもある
訪船は単なる現場確認ではない。乗組員との関係を築く場でもあり、船の状態を肌で感じる場でもある。事務所にいるだけでは得られない情報が、船の上にはある。
足を運ぶことの意味は、数字では測れない。



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