船の世界にも「年間最優秀賞」がある。公益社団法人日本船舶海洋工学会が毎年選定する「シップ・オブ・ザ・イヤー」だ。1990年から続くこの賞は、その年に日本国内で建造された船舶の中から、技術・芸術・社会性に優れたものに贈られる。今回はシップ・オブ・ザ・イヤー2025の受賞船を紹介したい。
ただでさえ、船の建造は大変だ。先進的な技術の実装は、さらに困難が伴ったことと想像する。
関係者の方々には敬意を表したい。
シップ・オブ・ザ・イヤーとは何か
毎年、日本国内で建造された船舶の中から応募・推薦があったものを対象に、専門家と報道関係者による選考委員会が審査する。技術の独創性・完成度・社会への波及効果などが評価基準だ。今年は第36回目で5隻が選考対象となった。
2025年の受賞結果
| 賞 | 船名 | 部門・概要 |
|---|---|---|
| 大賞 | げんぶ | 696TEU内航コンテナ船。無人運航を見据えた設計 |
| 技術特別賞 | 天歐 | 水素混焼エンジン搭載タグボート |
| 部門賞(小型貨物船部門) | そうめい | 小型RORO船 |
| 部門賞(漁船・調査船部門) | 鳥羽丸 | 自律運航・遠隔操船機能搭載の練習船 |
大賞——内航コンテナ船「げんぶ」
10人の選考委員のうち7票を集め、最終的に全会一致で選ばれたのが鈴与海運の内航コンテナ船「げんぶ」だ。
この船の最大の特徴は「無人運航」を見据えた設計だ。自律運航に必要な機能をすべて搭載し、将来的に人が乗らなくても航行できる技術の実証を目指している。選考委員からは次の3点が高く評価された。
・世界的に進む自律運航技術を幅広く実装していること。
・ヒューマンエラーによる海難事故を減らせる可能性があること。
・乗組員が快適に働ける居住環境を実現していることだ。
なぜ無人運航が注目されるのか。日本では船員の高齢化と不足が深刻な問題になっている。無人運航技術が実用化されれば、少ない人員でも安全に船を動かせるようになる。「げんぶ」はその第一歩として注目されている。
技術特別賞——水素混焼エンジン搭載タグボート「天歐」
技術特別賞を受賞したのは水素混焼エンジンを搭載した次世代型タグボート「天歐」だ。水素混焼エンジンとは、通常のディーゼル燃料に水素を混ぜて燃やす内燃機関で、CO2排出量の削減が期待できる。
港の中で大型船を誘導するタグボートに水素技術を実装することで、港湾全体の脱炭素化への足がかりにしようという発想が評価された。
混焼エンジンということは、水素の燃焼を助けるために、重油も同時に燃焼させていることを意味しているのだろう。どれくらいの割合で混焼させているのか?水素でどれくらいの時間・距離を航行できるのか?技術的な面で色々知りたい。
部門賞(小型貨物船部門)——小型RORO船「そうめい」
小型貨物船部門の部門賞は小型RORO船「そうめい」が受賞した。RORO船とはRoll-on Roll-offの略で、車両や貨物をそのまま積み込める構造が特徴の船だ。
部門賞(漁船・調査船部門)——練習船「鳥羽丸」
漁船・調査船部門の部門賞は練習船「鳥羽丸」が受賞した。新しい船首形状で燃費を改善しつつ、自律運航システムや遠隔操船機能を搭載した最先端の教育船だ。災害時には給水・給電・移動通信基地局としても機能する。
工務監督から見ると
「げんぶ」の無人運航技術は、工務監督の仕事にも将来的な影響を与えるかもしれない。夢もある。ただ、船に乗船していた経験を踏まえると、無人にはできないだろう。究極、航海士が乗船しなくなっても、機関士までいなくなるとは考えられない。機械トラブルまではコントロールできないからだ。陸上からの遠隔管理もより重要になるだろう。工務監督の役割が変わる可能性もある。
「天歐」の水素混焼エンジンは、先日書いた新燃料への疑問とも重なる。水素をどこから持ってくるかという製造段階の課題は残るが、まず需要を作るという現実的なアプローチは理解できる。
むろん、建造に関わった方たちに敬意は表したい。綺麗ごとでは語られないような困難を乗り越えて、建造されたとこと想像する。



コメント